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日本の文化を味わい、世界の心を豊かにする箸 No.9

日本人の優雅でやさしい箸
フランス在住の日本人女性からのメールより ─

フライパンで何かを焼いたりいためたりする時、こっちの人は木のへらやフォークを使いますが、私はよく箸を使います。
よくひっくり返せるし、フライパンをいためないし…。

小さな穴の中に何かを落した時、流しの水はけの穴とか、床の隙間とか、私が割り箸を使ってすぐ拾い上げるので、主人ほか皆に感謝されます。

また、昔、パリでフランス語を勉強している頃、クラスにドイツ人の女性がいました。
彼女のお父さんが日本びいきとかで、彼女にこう言ったそうです。
“我々ヨーロッパ人がてづかみで物を食べていた頃、日本人は既に箸を使っていた。 その後我々も道具を使うようになったが、ナイフやフォークなど武器にもなりかねない物をテーブルで使う。 日本人の優雅でやさしい箸に比べて何と野蛮なことだ”と。
  へぇー、そういう考えもあるかと、その時感心したり、嬉しかったりでした。

日本語のハシというのは
クチバシから転訛したもの
大宅壮一著「蛙のこえ」より  昭和27年(1952年)鱒書房刊 ─

スシとハシ

主食の統制が緩和されて、立ち食いのスシもそうビクビクしないで食えるようになった。 ところで、スシは箸で食うべきか、手でつまんで食うべきかという質問に対して、 もちろん三本の指でつまんで食うのが江戸前だという答が最近どこかの新聞に出ていた。
アナーキズムの元老で人類学者でもある石川三四郎老が、いつか私にこんなことを教えてくれた。 日本語のハシというのはクチバシから転訛したもので、つまり鳥の真似である。 これに反して西洋人が食事に用いるフォークとナイフは、猛獣の爪と牙を模倣したものである。こういう点にも、 東西文明の性格の基本的な相異がはっきり現れているというのである。
しかし西洋でも、食事には必ずフォークやナイフを使うようになったのは、ずっと後世のことである。ローマ人は、何でも指でつまんで食っていた。 オヴィディウスの『恋愛術』には「食べものを指でつまんでとれ」という句があるし、ホラティウスにも「脂のついた手」というのがある。 セネカの手紙に「後で手を洗う必要のない位の食事」という表現があるが、これは指をよごすほどのご馳走もないという意味である。(中略)

インドやインドネシアでは、今でも大衆は手でものを食う場合が多い。 特に回教人種の間では、右手は清浄なものとして不浄なことには用いられない。 日本でも、食事に主としてハシを使うようになったのは江戸時代に入ってからである。 そこで今でも生活の一部に古い習慣を残しておいて、それを用いることがかえってイキに見えるのだ。 スシをハシで食ったのでは食ったような気がしないという江戸っ子心理はその一例である。

図書館で不要になった「お持ち帰り」の本の中から50年前のこの本をもらいました。
面白い!! 読んでいて吹き出してしまいます。
鱒書房は今はありません。私にとってお宝本です。

平成16年9月

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